【SS】東の海の夜の森。第1戦
茹だる様な湿気も無く、時折吹く風が心地好い。絶好の戦闘日和と言った所だろう。特に高揚する訳でも無く、初めての地、久し振りの夜戦にも関わらず気持ちは至って冷静だった。
愛銃であるVSR-10のコッキングレバーを引く。メンテナンスは充分とは言えない。だが、散々に弄り倒したそれの特性は十二分に理解しているつもりだ。例えメンテナンス不足であろうと、その弾道がどのように描かれるかは想像出来る。それが暗闇の中、発射弾が見えなくともだ。
コッキングレバーを戻しチャンバーに弾を送る。
準備は完了、後は開始の合図を待つだけだ。
スタート位置にて軽く、本当に軽く呼吸を整える。自身のコンディションも申し分ない。耳の調子も良いし、眩暈も起きる気配が無い。――いつでもやれる。
木々の隙間か洩れる月明かりは薄暗く、動くに易いだろう。
「では各班の行動なんだけど――。」
主催チームリーダーからのブリーフィングが入る。概要だけで纏めればこうだ。
我が分隊は中央に布陣し、中央を防衛しつつ左右分隊への支援。敵陣営は恐らく左右に分かれての進軍を行うから二正面作戦を行わせよう、との事だ。
我がチーム員、猫々小隊からの参加は自分を含め6名。本日の参加人数で見れば適正な数字であるだろう。
簡単なブリーフィングを終えると同時にホイッスルが静寂の中、甲高く響く。時を待たずして、もうひとつの笛の音も鳴り響く。
――ゲーム開始だ。
暗い木々の合間を縫い、中央部塹壕へと急ぐ。敵の気配は無い。――行ける!!。
だが一抹の不安が過ぎる。もし、もしもだが、敵が中央突破を試みれば自分達は勿論、味方にも壊滅的な被害が及ぶだろう。
私は中央塹壕を目指すのを止め、塹壕よりやや離れたブッシュに入る。
視線を泳がせ、耳を立て、気配を探る。問題は無い、今のところ、は。
そのまま塹壕を横目に更に前に進む。杞憂で済むのなら良いのだが、塹壕を狙い撃ちにされたとしたら我が隊は苦戦を強いられるだろう。その行動を疎外されたとあれば味方全体の行動に支障が出る。それだけは避けたかった。
しかし、そこで予期せぬ事態が起こった。
思いの外進みすぎてしまったのだ。
慣れない土地、久し振りの夜戦という事もある。そして敵の気配が無かった事も大きな要因だろう。
私は突出し過ぎてしまった。
(取り敢えず報告はしないとまずい、な。)
左手で無線機のPTTスイッチを握り口を開く。
「タカートより猫々、タカートより猫々。目標地点より大きく突出してしまった。地点防衛は――。」
そこでハッと気が付く。敵の気配だ。
足音は聞こえない。敵影も見えないのだが。確かな違和感を覚えた。
ジッ、と視線を這わせ。全体を捉える。右手前方に3人以上、左手前方に2人。どちらも距離はあるものの、確かに感じ取れた。
細木の折れる音、草の揺れる音、音のしてない所の影。まず間違いは無いだろう。
そして何より一番の問題は、敵が自分の横を素通りしている事実だ。恐らくだが交戦ポイントは自分の遥か後方なのだろう。
そして察するに前衛の敵が来ているということは後衛の敵は目前という事だ。
そうこう考えている内に目の前5M程に在る茂みが揺れ動いた。
愛銃であるVSR-10のコッキングレバーを引く。メンテナンスは充分とは言えない。だが、散々に弄り倒したそれの特性は十二分に理解しているつもりだ。例えメンテナンス不足であろうと、その弾道がどのように描かれるかは想像出来る。それが暗闇の中、発射弾が見えなくともだ。
コッキングレバーを戻しチャンバーに弾を送る。
準備は完了、後は開始の合図を待つだけだ。
スタート位置にて軽く、本当に軽く呼吸を整える。自身のコンディションも申し分ない。耳の調子も良いし、眩暈も起きる気配が無い。――いつでもやれる。
木々の隙間か洩れる月明かりは薄暗く、動くに易いだろう。
「では各班の行動なんだけど――。」
主催チームリーダーからのブリーフィングが入る。概要だけで纏めればこうだ。
我が分隊は中央に布陣し、中央を防衛しつつ左右分隊への支援。敵陣営は恐らく左右に分かれての進軍を行うから二正面作戦を行わせよう、との事だ。
我がチーム員、猫々小隊からの参加は自分を含め6名。本日の参加人数で見れば適正な数字であるだろう。
簡単なブリーフィングを終えると同時にホイッスルが静寂の中、甲高く響く。時を待たずして、もうひとつの笛の音も鳴り響く。
――ゲーム開始だ。
暗い木々の合間を縫い、中央部塹壕へと急ぐ。敵の気配は無い。――行ける!!。
だが一抹の不安が過ぎる。もし、もしもだが、敵が中央突破を試みれば自分達は勿論、味方にも壊滅的な被害が及ぶだろう。
私は中央塹壕を目指すのを止め、塹壕よりやや離れたブッシュに入る。
視線を泳がせ、耳を立て、気配を探る。問題は無い、今のところ、は。
そのまま塹壕を横目に更に前に進む。杞憂で済むのなら良いのだが、塹壕を狙い撃ちにされたとしたら我が隊は苦戦を強いられるだろう。その行動を疎外されたとあれば味方全体の行動に支障が出る。それだけは避けたかった。
しかし、そこで予期せぬ事態が起こった。
思いの外進みすぎてしまったのだ。
慣れない土地、久し振りの夜戦という事もある。そして敵の気配が無かった事も大きな要因だろう。
私は突出し過ぎてしまった。
(取り敢えず報告はしないとまずい、な。)
左手で無線機のPTTスイッチを握り口を開く。
「タカートより猫々、タカートより猫々。目標地点より大きく突出してしまった。地点防衛は――。」
そこでハッと気が付く。敵の気配だ。
足音は聞こえない。敵影も見えないのだが。確かな違和感を覚えた。
ジッ、と視線を這わせ。全体を捉える。右手前方に3人以上、左手前方に2人。どちらも距離はあるものの、確かに感じ取れた。
細木の折れる音、草の揺れる音、音のしてない所の影。まず間違いは無いだろう。
そして何より一番の問題は、敵が自分の横を素通りしている事実だ。恐らくだが交戦ポイントは自分の遥か後方なのだろう。
そして察するに前衛の敵が来ているということは後衛の敵は目前という事だ。
そうこう考えている内に目の前5M程に在る茂みが揺れ動いた。
2013年09月17日 Posted by タ・カート
at 01:17
│Comments(0)